開催日:2007年11月6日(火)
会 場:福岡市美術館
布やロープを使った大規模な野外展示で知られるアメリカのアーティスト、クリストとジャンヌ=クロードによる講演会。国立新美術館(東京)、常陽藝文ホール(水戸)に先がけ、福岡市美術館での講演会の企画、アレンジメントおよび広報のサポートを行いました。
谷間にかかったオレンジのカーテン、銀色の布で包まれた建造物、直径8メートルもの巨大な傘の群れ、ピンク色に縁どられたマイアミの島々。
これらすべては現実に行われたアート・プロジェクト、アメリカ在住の美術作家クリストとジャンヌ=クロードの手になる作品です。
その舞台はアメリカのみならず、ヨーロッパや日本、オーストラリアなど世界各地にわたり、展示空間も都市や田園地帯、海岸線や丘陵地帯などさまざま。
そんな彼らの超ユニークな芸術作品ですが、いずれも僅か2週間ほどの展示にもかかわらず、世界中から数百万人もの人々が彼らの芸術作品をひと目見ようと集まって来るのです。
この世界的アーティストの来日に合わせて日本各地で講演会が計画され、BLDのアート・チームが福岡での企画およびアレンジメントに参加、おりしも50周年の記念イベントを予定していた福岡市美術館の目玉企画のひとつとして開催することになりました。
今回の講演会では、その動向が世界中のアート・ファンから注目を集めている二つの最新プロジェクト、「オーバー・ザ・リバー、コロラド州、アーカンサス川のプロジェクト」と「ザ・マスタバ、アラブ首長国連邦のプロジェクト」を中心に、これまでの主要作品の実際の展示風景や、何年にもわたる作品完成までのプロセスが、構想段階で描かれるドローイング(平面作品)や資料写真など、多数の画像を使って丁寧に紹介されました。
このうち「オーバー・ザ・リバー」は、早ければ2012年の実現が期待されている今もっともホットなプロジェクト。アメリカ、コロラド州を流れる川の上空をおよそ10kmにわたり布のパネルで覆い、それを岸辺や川下りのボートから体感しようというもの。
一方の「ザ・マスタバ」は、アラビアの砂漠にドラム缶を台地のように積み上げ、高さ150mの立体造形に仕上げるというもの。底面の広さは225m×300mにもなると言われています。
いずれも彼らの作品ならではのスケールの大きさ、「色彩」にもこだわった美しい佇まいが想像され、講演中にもしばしば感嘆の声が聞かれるほど。
また、レクチャー後の質疑応答では一時間半を超える活発なやりとりも行われ、「福岡のアート・ファンはとても熱心だし、いい質問が多かった。」とアーティストもその関心の高さに驚いたようでした。
2年連続の来日となったクリストとジャンヌ=クロードの二人でしたが、多忙なスケジュールを縫っての短期滞在、しかも直前まで詳細が決まらなかったとあって、事前の広報期間の短さが心配されましたが、講演会としては福岡市美術館始まって以来の観客動員数を記録したとか。
あらためてこの世界的アーティストの高い人気を物語る、まさにタイムリーなイベントとなりました。